2012年4月14日、水田宗子氏の評論集『モダニズムと<戦後女性詩>の展開』(思潮社刊)の出版を記念して、思潮社主催によるシンポジウムが「左川ちかから手渡されるもの-詩とジェンダー、その先へ」をテーマに学校法人城西大学の東京紀尾井町キャンパスで開催されました。
1911年2月に北海道に生まれ、24歳の若さで夭折したモダニズムを代表する女性詩人左川ちか。昨年は、この詩人の生誕100年にあたります。シンポジウムでは第Ⅰ部において、著者である水田宗子氏(詩人、比較文学者、学校法人城西大学理事長)は、基調講演で「『わたし語り』から自己表象へ-現代女性詩の『惨事のあと』の感性」と題して、茨木のり子、白石かずこら戦後女性詩人の作品を読み解き、底流で左川の詩につながっていると指摘しました。
第Ⅱ部では、藤井貞和氏(詩人・国文学者)、 井坂洋子氏(詩人)、 水無田気流氏(詩人)が水田氏とともに、左川の詩や評論集をもとに現代のジェンダーと詩、ジェンダーを超えた詩の表現などについて討論しました。左川ちかを起点として、茨木のり子、石垣りん、吉原幸子、高良留美子、 白石かずこら戦後女性詩人の表現に、近代の「惨事」の生き残りとしての存在感覚、生き延びた者たちの 「生還の途上の想像力」を読み取り、「女」から「個人」へ、「個人」から「個体」へ、「わたし」から 「不確かな自己へ」、「わたし」という存在感覚が不確かになっていく時代において、ジェンダーの外部を志向する女性詩人たちが引き受けた自己表象の課題が浮き彫りとなりました。
シンポジウムには学生、市民、マスコミ関係者ら約160人が集まり、熱心に聞き入っていました。
また、シンポジウムに合わせて、4人のパネリストの著作の展示販売も行われ、多くの方で賑わっていました。
基調講演をする水田理事長 |
第Ⅱ部の討論 |
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藤井 貞和氏 |
井坂 洋子氏 |
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水無田気流氏 |
シンポジウムの様子 |
多くの人で賑わうパネリストの著作展示販売