2012年6月29日・30日の2日間、ヘルベルト・プルチョウ 追悼シンポジウムおよび大庭みな子 国際シンポジウム「異郷への旅と物語」が、城西国際大学国際人文学部、比較文化研究センターの主催により東京紀尾井町キャンパスで開催されました。
このシンポジウムは、城西国際大学と深いご縁があった日本文学研究者ヘルベルト・プルチョウ氏(元城西国際大学国際人文学部長、比較文化研究センター長、1939-2010)、女性作家大庭みな子氏(1930-2007)のお二人を偲び、城西国際大学創立20周年記念として行われたものです。
プルチョウ氏は紀行文学を丹念に読み解き、独自の観点から江戸時代における日本人の『旅』の意義を明らかにしました。また大庭みな子氏は、海外経験の豊富な人生を文学の素材とし、一人の女性として、また人間として独自の『異郷』論を展開しました。
今回のシンポジウムでは、「異郷への旅」をコンセプトに、2日間にわたって二人の業績や人生をたどりつつ、国内外の研究者や編集者による新しい研究成果の発表やパネルディスカッション等を多彩な視点から行いました。
初日の29日は、城西国際大学 国際人文学部ポール・シャロウ教授による開催挨拶に続き、水田宗子理事長(城西国際大学大学院院長)が挨拶しました。その後、国際日本文化研究センターの笠谷和比古教授が基調講演としてプルチョウ氏の業績や多様な研究成果を振り返り、インディアナ大学ブルーミントン校のスミエ・ジョーンズ名誉教授が“江戸”というプルチョウ氏の研究分野での「異境への旅」の概念について講演しました。また、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のマルラ俊江氏がUCLAで同僚だった頃のエピソードなどについて講演しました。午後はUCLAのリピット水田清爾准教授をコーディネイターに、国内外の気鋭のプルチョウ、大庭みな子研究者5名がそれぞれの研究成果を発表しました。
国際人文学部三木 紀人客員教授の閉会挨拶の後、行われたレセプションでは、著名な日本文学者ドナルド・キーン氏が、教え子であったプルチョウ氏の思い出を語るとともに、プルチョウ順子氏、大庭利雄氏等がスピーチを行い、それぞれの思い出やエピソードを語りました。
開会挨拶をするポール・シャロウ氏
挨拶する水田宗子理事長 |
基調講演を行う笠谷和比古氏 |
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講演を行うスミエ・ジョーンズ氏 |
講演を行うマルラ俊江氏 |
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午後の研究発表の様子 |
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コーディネイターのリピット水田氏 |
Daniela Tan(Zurich University)氏 |
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廣瀬知子氏(城西国際大学) |
Emanuela Costa 氏(University of Naples “L'Orientale”) |
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Timothy Goddard(UCLA)氏 |
Francesco Comotti, Ca' Foscari(University of Venice)氏 |
閉会挨拶をする三木紀人氏
レセプションでのドナルド・キーン氏(右)スピーチ |
プルチョウ順子氏スピーチ |
大庭利雄氏スピーチ
翌30日は、大庭みな子国際シンポジウムとして、水田理事長の基調講演に続き、文教大学の江種満子名誉教授が大庭作品における中国文学の影響について講演し、東洋英和女学院大学の与那覇恵子教授は「大庭みな子全集」を手がけた際の特筆すべき点や苦労話について講演しました。
その後編集者の宮田毬栄氏やスミエ・ジョーンズ名誉教授、前日講演を行った海外の研究者達によって、それぞれが最も印象に残る大庭作品に関してのディスカッションが行われました。
また、シンポジウム記念特別展示として、1Fギャラリーにて大庭みな子氏の貴重な肉筆原稿や初版本に加え、油絵、ドローイングおよびアラスカのお面等のコレクションを展示しました。さらに地下ホール前のホワイエでもプルチョウ氏が長年かけて集めた作品コレクションや氏の人生をふりかえる写真パネル類、二人の著書も多数展示され、両氏にゆかりのある方々をはじめ、国内外研究者や学生、マスコミ関係者など、2日間で来場した約250名の方々が熱心に展示物を見学されていました。
2日間にわたってプルチョウ氏、大庭みな子に関するさまざまな研究発表や活発なディスカッションが行われたことに加え、来場された方々がさまざまなかたちでお二人の業績を振り返りながら偲ぶことのできた、充実したシンポジウムとなりました。
基調講演をする水田宗子理事長 |
講演をする江種満子氏 |
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講演をする与那覇恵子氏 |
ディスカッションの様子 |
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宮田毬栄氏 |
スミエ・ジョーンズ氏 |
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海外からの研究者たち |
両日の登壇者たち |
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1Fの大庭みな子特別展示の様子 |
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地下ホワイエの展示の様子 |
9:30 - 9:45 | 大庭みな子絵画展 オープニング セレモニー(1F ギャラリー) |
10:00 - 10:05 |
開会挨拶 Paul Schalow, Josai International University |
10:00 - 10:05 |
シンポジウム開催にあたって Noriko Mizuta, Josai International University -異郷への旅の物語-プルチョウ先生のこと、大庭さんのこと |
10:40 - 11:10 |
基調講演 Kazuhiko Kasaya, International Research Center for Japanese Studies -プルチョウ先生の研究業績を顧みて |
11:10 - 11:25 | (休憩) |
11:25 - 11:45 |
講演 Sumie Jones, Indiana University -異境への旅 : 江戸から明治へ |
11:50 - 12:10 |
講演 Toshie Marra, UCLA -UCLAでのプルチョウ先生 |
12:10 - 13:30 | ランチ |
13:30 - 15:45 |
研究発表 Coordinator : Seiji Mizuta Lippit, UCLA Daniela Tan, Zurich University - 記憶の異郷への旅 Tomoko Hirose, Josal International University - 竹西寛子論 : 故郷、異教、原爆 Emanuela Costa, University of Naples “L'Orientale” - 世界と出会う大庭みな子文学 : 旅、越境 Timothy Goddard, UCLA - 永井荷風 : 外国散策と日本近代化評価 Francesco Comotti, Ca' Foscari University of Venice - 自然界、人間界への旅 |
15:45 - 15:50 |
閉会挨拶 Sumito Miki, Josai International University |
16:00 - 17:30 |
レセプション ドナルド・キーン氏、プルチョウ順子氏、大庭利雄氏スピーチ |
10:00 - 10:30 |
基調講演 Noriko Mizuta, Josai International University - 大庭みな子 記憶の文学 |
10:40 - 11:20 |
講演 Mitsuko Egusa, Bunkyo University - 大庭みな子の「火草」及び魯迅の『野草』について - ヒロシマを表象する階梯 Keiko Yonaha, Toyoeiwa University - 大庭みな子全集を手掛けて |
11:20 - 11:35 | 休憩 |
11:35 - 13:00 |
ディスカッション Sumie Jones, Indiana University -シアトルと作家 大庭みな子の誕生 Marie Miyata, Editor -大庭みな子の編集者として Noriko Mizuta, Daniela Tan、Emanuela Costa、Francesco Comotti |
13:00 - 14:00 | レセプション |