2016年7月1日、学校法人城西大学(水田宗子理事長)は、東京紀尾井町キャンパス1号棟ホールで、国際現代詩シンポジウム「詩と幼年時代」を開催しました。高旭東(Gao Xu Dong)中国人民大学教授による魯迅をテーマにした講演会に加え、日本と中国の現代詩人による座談会と朗読会で、詩人や研究者、教職員、留学生、日本人学生ら約160人が聴き入りました。今回のイベントを通じて、日中両国に蓄積された知の活用と両国間の研究ネットワークの強化などが期待されます。
本学は昨年12月、創立50周年を記念して法人本部内に国際現代詩センターを設立。その後、中国の北京大学詩歌研究院、北京師範大学、首都師範大学と交流協定を結び、日中両国の現代詩ジャンルに関する研究の推進を行っています。今年3月には北京大学内に本学の現代詩センター事務所を開設。北京大学内に日本の大学の研究所が設置される初のケースとなりました。今回のイベントは、両国の詩歌研究を一層深めることを目的として開催しました。
開会を前に水田理事長が主催者を代表して挨拶。「北京大学とのご縁で高先生による魯迅研究の講演をいただくことになりました。魯迅は近代化の中で中国と日本をつなぐ極めて重要な文学者で、本日のシンポジウムの場にふさわしいご講演と期待しています。また、シンポジウムは、創作する者にとって幼年時代はどういう意味を持っているかがテーマですが、同時に日中の激動の時代に成長してきた、年代、経験も違う詩人たちの幼年時代と表現との関係についても考えてみたいと思います」と述べました。
午前中は高氏が「魯迅 第一作目の小説における日本との関係性」と題して講演、午後の座談会と朗読会に移りました。参加した詩人は中国側が、楊克(Yang Ke)、梁暁明(Liang Xiao Ming)、樹才(Shu Cai)、華清(Hua Qing)、从容(Cong Rong)の5氏に加え、城西国際大学の田原(Tian Yuan)客員教授。日本側が、宇佐美孝二、竹内新、新延拳、野村喜和夫、三角みづ紀の5氏と詩人でもある水田理事長。
シンポジウムで |
講演する高氏 |
座談会は、楊、新延、華、野村、田の5氏に水田理事長が登壇。進行役は田教授が務め、水田理事長は「詩だけでなく創作するものにとって幼年時代は大きな原点。また風景と写真が幼年時代を語るキーワードになっている」と述べました。楊氏は「幼年時代は唐詩に親しみ、父と母に詩の手ほどきを受けた。80年代になって初めて外国の詩が翻訳され、外国の詩を学ぶことができた」と振り返りました。新延氏は「詩という魔法を使うことによって人は幼年時代に帰ることができる」と語り、華氏は「詩は我々の志を表現してくれる。人としての叙情や考察、願いを表してくれる」と述べました。また、野村氏は「中国の方のコメントを聴いていると、詩と死が同じに聞こえる。幼年と人間の最後の死は同じことなのではないか」と述べ、田教授は「どの詩人にとっても幼年時代は創作の源の一つ。人間形成にも大きな影響を与えるのではないか」と語りました。
座談会の様子
この後、梁、樹、从、竹内、宇佐美、三角の6氏が加わって朗読会が行われました。新たに加わった6氏がそれぞれ、「詩と幼年時代」について短くスピーチ、12人全員がこの日のテーマにちなんだ詩を一遍ずつ朗読しました。高氏が飛び入りで水田理事長の詩を暗唱、即興で4行詩を披露する一幕もありました。
朗読する新延氏
朗読会の様子、朗読者は三角氏
朗読する从氏
朗読する竹内氏
留学生から花束の贈呈
今回のシンポジウムを記念し7月1日から4日まで、東京紀尾井町キャンパス3号棟の「水田美術館アートギャラリー」で、中国の書道家で水墨画家の張笑神氏の水墨画展が開かれました。
張氏は1958年生まれ。墨に魅了され、50歳を過ぎてから絵筆を執った異色の経歴の持ち主です。作品は墨の滲みやぼかしとともに描線を用いて抽象的に描かれているのが特徴で、多くの国際芸術専門機関や個人に所蔵されています。北京大学詩歌研究院に本学の現代詩センターを開設した折にも、温かなサポートをいただいたほか、今回のシンポジウムにも多額の寄付をいただきました。
今回は詩人の谷川俊太郎氏を描いた作品など20点が展示されました。シンポジウムを前にオープニングセレモニーが行われ、水田理事長が「前衛的で伝統を超えた新しい水墨画を目指されている。今回のイベントに大変ふさわしいもので、展示会は私どもにとって思い出深いものになると思います」と挨拶。張氏は「自分の理想を実現させてくれる場を提供していただき感謝します。皆さまのご支援による展示会は、私の次のステップの原動力になると思います」と応えました。
森本雍憲・城西大学学長や張氏が師と仰ぐ画家の野田弘志氏も加わってテープカットして開場を祝いました。
張笑神水墨画展のテープカット(右から2人目が張氏) |
絵を説明する張氏 |
この日の国際現代詩シンポジウムの開会挨拶の中で、水田理事長は日本で学ぶ留学生を対象にした詩歌賞「帰路賞」を創設したことを発表しました。
これは創立50周年を記念していただいた城西大連・瀋陽学友会(本学留学生による同窓会組織)からの寄付金を基金として創設したものです。賞の名称は、水田理事長の詩集「帰路」にちなんだもので、異国文化に触れ、さまざまな勉学に励む中で、さまざまな思いを詩に託してほしいとの願いをこめました。新鮮で個性的な作品を期待しています。ふるってご応募ください。
【主 催】 | 学校法人城西大学国際現代詩センター |
【協 賛】 | 思潮社 |
【後 援】 | 毎日新聞社、ジャパンタイムズ |
【選考委員】 | 北川透(詩人)、高橋睦郎(詩人)、野村喜和夫(詩人)、平田俊子(詩人)、水田宗子(詩人・比較文学者)、 田原(詩人・翻訳家) |
【対 象】 | 現代詩(日本語で書かれたもの) |
【応募資格】 | 日本で学ぶ外国人留学生/大学生/高校生。年齢不問 |
【応募方法】 | 応募作品は自作・未発表のもの |
【締め切り】 | 2016年11月30日(消印有効) 住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、年齢、性別、電話、E-メールアドレス、国籍、略歴を記すこと。 作品はA4用紙にプリントアウトしたもの。原稿の返却には応じられません。 |
【郵送先】 | 〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-26 城西大学・城西国際大学 留学生詩歌賞「帰路賞」委員会 |
【発 表】 | 2017年1月末に、当インターネットwebサイトで発表。 雑誌「現代詩手帖」への掲載も予定。表彰式は2017年2月(予定) |
【賞 金】 | 最優秀作品(1編) 30万円 奨励賞作品(3編) 3万円 |
【連絡先】 | 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-3-20 学校法人城西大学紀尾井町キャンパス3号棟 国際現代詩センター E-メール: kiro@jiu.ac.jp |