学校法人 城西大学 Josai University Educational Corporation

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「王希奇展 - 一九四六」を開催 記念シンポジウムも開きました

作品「一九四六」の一部

作品「一九四六」の一部

学校法人城西大学(上原明理事長)は、墨絵と油絵の融合という独自のスタイルを確立し、世界的に評価の高い歴史画家である王希奇氏の展覧会「王希奇展 一九四六」を9月28日から10月5日まで、東京都港区の東京美術倶楽部で開催しました。オープニングの9月28日には、開催記念シンポジウムも開きました。

王氏は、本学と学術交流協定を締結している中国・瀋陽の魯迅美術学院に勤め、長年にわたり中国国家重大歴史題材美術創作プロジェクト契約画家として活躍しています。王氏は、このほど3年間半という長い年月をかけて、縦3m、横20mもの巨大な作品「一九四六」を完成させました。葫蘆島からの105万人余の残留日本人の大送還をテーマとした大作です。作品には黙々と歩みを進める葫蘆島からの引揚者、約五百人が描かれ、その一人ひとりに作者の思いが込められ、見る者を引き付ける迫力があります。日本初公開の今回の展覧会では、新作の「一九四六 見守る海」をはじめ、日本統治時代が偲ばれる大連や瀋陽の歴史的建造物を描いた一連の作品も含めて計21点を展示しました。

9月28日、東京美術倶楽部で行われたオープニング・セレモニーで、本学の小野元之・理事長特別補佐は挨拶で「中国と日本を結ぶ、歴史に残る超大作の数々をご覧いただき、日中の交流に思いを馳せていただきたい」と述べました。また、監修をいただいた青柳正規・前文化庁長官は、この日が日中国交正常化45周年の記念すべき日の前日であることに触れて、「王先生は引き揚げの日本人の苦労と希望、様々な感情を描くことで、日本人への理解を絵画として示してくださった。私たちも出来る範囲で努力をして日中、中日友好のために尽くしていきたい」と語りました。この後、王氏、小野理事長特別補佐、青柳氏、汪婉・駐日中国大使夫人、多々見良三・舞鶴市長、井口和起・福知山公立大学学長、宋偉・中国東北大学芸術学院教授の7氏がテープカットして、開催を祝いました。引き揚げを体験した方々も会場を訪れ、作品の前で王氏と語らう光景も見られました。

同日午後は東京都千代田区の本学東京紀尾井町キャンパス3号棟の国際会議場で記念シンポジウムが開かれました。青柳氏が講演。「悲惨な戦争とこれからの平和の接点の部分を、あの大作で描いてくださった。複雑で理解できないような雰囲気をきちんと表現できるのが芸術」と指摘しました。

王氏は「作品『一九四六』をめぐって」と題して基調講演。構想から7年、制作から3年半を要した「一九四六」の経緯や苦労を披露しました。葫蘆島近くの出身の王氏は「小さいころから聞いている引き揚げについて取材を始めたところ、残された写真の中に引き揚げで骨壺を持った子どもたちの写真をみて衝撃を受けました。この子は、この悲しい記憶を持ってその後どういう人生を歩んだのだろうと。罪のない子どもたち一人ひとりにそれぞれ家族がある。そうした一人ひとりの心の声を記憶に残そうと思い立ちました」と制作の動機を説明。王氏には今でも、子どもたちの泣き声が聞こえるそうです。制作の途中では精神的にまいった時期もあったと明かした王氏ですが、「どの人物も心をこめて描き対話するほどになりました」とも述べました。

井口氏をモデレーターにしたパネルディスカッションでは、「芸術で如何に歴史的記憶を表現するか」をテーマに発言がありました。パネリストは、宋氏、牟岱・遼寧省社会科学院副院長、劉悦笛・中国社会科学院研究員、張燕楠・中国東北大学教授、ブライアン・マクファーレン・マサチューセーツ大学教授、劉仁杰・魯迅美術学院教授の各氏。牟氏は「絵画表現によって歴史の空白は埋められ、永久に記憶される」と述べ、劉仁杰氏は「芸術は言葉では表現できない真実を再現させる機能を持っている」と語りました。
  また会場からは歴史学者の黒沢文貴・東京女子大教授の「歴史の経験を共有していくうえで、一人ひとりの視点で歴史を伝えていくことが重要。その点で王氏の『一九四六』は、まさしく伝わるものだ」との発言もありました。
  最後に井口氏は「国の枠を超えて世界に記録として残していくという大作が、今日発表されたことの持つ意義はとても大きい。新しい21世紀の中日、日中関係も始まるのではないか」と結びました。

今回の展覧会をめぐっては、全日本空輸株式会社、魯迅美術学院、在瀋陽日本地方自治体プラットフォーム、瀋陽華禹文化伝媒有限会社はじめ、多くのご後援をいただきました。

オープニング・セレモニーのテープカット

オープニング・セレモニーのテープカット


絵の前で引き揚げ体験者と語る王氏

絵の前で引き揚げ体験者と語る王氏

基調講演する王氏

基調講演する王氏


講演する青柳氏

講演する青柳氏

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

モデレータの井口先生

モデレータの井口先生

世界各国からいらした美術評論の先生方

世界各国からいらした美術評論の先生方


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