英語art=アートの先行語であるフランス語art=アールは、ラテン語arsの原義をうけて、そもそも生活に関わる技術や技芸を意味していました。それが芸術、または美術を専門的に指すようになったのは、せいぜい19世紀後期以降のことです。そうした変化のきっかけは、18世紀においてartistとartisanの区別が強調され、そこで、後者が労働者に限定されるようになったということでした。
本講座では、「アート」と「アール」の以上のような力関係を理解することで、従来、単線的に捉えてきた芸術または美術の歴史を見通す、と同時に、日常生活を彩る技芸とその美意識について考えます。
なお、美術館での見学や路上観察と、講義を組み合わせて、実物にふれながら学びます。 |