日本でもワイン消費の習慣が定着しつつありますが、ヨーロッパでは1000年以上の昔から、ワインやビールが食生活や経済活動の中で重要な位置を占め、領主と農民のせめぎ合いのなかで酒を巡って様々な人間関係が築かれていました。ワインという嗜好品に着目し、原材料となるブドウを作り、醸造し、消費してきた人々の営みを見ることで、当時の生き生きとした社会の姿をかいまみることができます。 この講座では、日本ではまだ馴染みの薄い中央ヨーロッパのハンガリーのワインに焦点を当て、中世から近代にかけての生産、消費、流通の各場面をみていきます。ワイン生産の北限ラインはちょうど中央ヨーロッパを貫いているので、アルコール文化を通じてビール消費の盛んなプラハとワインを好むブダペストやウィーンという地域の多様性への目も開けてくるでしょう。宗教改革の時代に教皇に捧げられた貴腐ワインの由来や、16世紀にウィーンまで攻め上がったオスマン帝国軍とワイン文化の関係など、歴史の表舞台の裏で活躍したワインを手がかりに、この地域の歴史を再現していきます。
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