2011年は“EV(電気自動車)元年”かもしれません。EVのレンタカーサービスが始まり、一般へのEV販売も始まりました。今最も新しい乗り物、それはEVなのでしょうか?いいえ、EVの歴史は意外に古いのです。1832年スコットランド人ロバート・アンダーソンによるEV発明は、1886年のカール・フリードリッヒ・ベンツのガソリン自動車(ファースト・ベンツ)発明の50年前なのです。1897年にはニューヨークをEVタクシーが走り、1900年のアメリカにおける自動車生産台数4,192台のうち1/3はEVで、残り2/3を蒸気自動車とガソリン自動車が分け合っていたのです。その後、1908年のT型フォード大量生産開始と、時を同じくして整備されていったガソリン販売網に押し切られるように、EVと蒸気自動車は姿を消していきました。EVは原理的にも実用的にも、その実態は“電池自動車”です。エネルギー源である“電池”の歴史も古くて、それは“化学”の歴史そのものです。1780年イタリア人ルイジ・ガルバーニによる“動物電気”発見にまでさかのぼることができ、その後1801年同じくイタリア人アレッサンドロ・ボルタにより“ボルタ電池”が発明されました。ジェームス・ワットの蒸気機関発明(1769年)に遅れること30年だったのです。EVの動力源としての電池を開発しようと1899年に、かのトーマス・エジソンも長寿命・高性能電池開発プロジェクトを立ち上げています。日本においても1925年豊田佐吉が懸賞金100万円(当時)で懸賞公募した“佐吉電池”の話は有名です。佐吉が求めた電池の性能は、現在のリチウムイオン電池の約10倍だったそうです。世界各国で理想の電池開発レースが繰り広げられ、20世紀初頭に広がった“ガソリンスタンド”網が“電気スタンド”網に置き換わろうとしているのです。まさに「古くて新しい乗り物・それはEV」です。 |