《ニーベルングの指環》は神話を舞台にしながら、愛と権力・金銭の対立など、現代にも通じる社会の問題とそのなかで行動する人間のさまざまな姿をリアルに描いている。第1部《ラインの黄金》を中心に、そうした人間的な側面を作品のなかから紹介。
第2部《ヴァルキューレ》、第3部《ジークフリート》を中心に、男女の愛や家族という私的領域と法や権力の関わりを考え、ワーグナーが抱いていた結婚観・恋愛観・女性観を紹介。
今回は音楽を中心に、ワーグナーが《ニーベルングの指環》で用いた示導動機の技法(特定の人物、事物、想念などを特定の旋律や音型で表す)を紹介し、登場人物の深層心理をも表しつつ、聴き手の深層心理にも働きかける示導動機の多義的な機能を考える。
第4部《神々の黄昏》を中心に、悪意(嫉妬、陰謀)が増殖してゆくかのような陰惨なドラマの展開を追って、人間心理の暗部に光を当て、結末にもたらされる救済の意味について問い直す。