直木賞受賞作『小さいおうち』(文藝春秋社刊)で、昭和初期の東京における、ある家族の日常風景を丁寧にそしてユーモアを交えて描きだした中島京子氏と、『一〇〇年前の女の子』(講談社刊)で、ご母堂テイさんの明治から昭和にわたる生涯を愛情深く描いた船曳由美氏。お二人は、『小さいおうち』文庫版のあとがきで、「私たちと地続きの時代の物語」と題した対談を行い、大正・昭和初期という時代の“新しさ”“面白さ”を語っています。
この対談では、言葉づかい、食べもの、衣服、住居など、当時の暮らしぶりをはじめ、市電やタクシーを使って都内を行き来する様子、デパートでローンで買い物をするなどの消費生活がこの時代に始まっていることなど、お二人の鋭い観察眼と、豊富な知識から、楽しいエピソードが紹介されていました。一方で、この時代の背景にはあの苛酷な戦争があり、その影は迫りつつありました。やがて日常の暮らしは根本から破壊されていくのです。その中で『小さいおうち』の最終章に描かれた“秘められた恋の顛末”とは……。
農村から東京へ出てきた少女が、どのように自立の道を歩んでいったのか――それぞれの作品に触れながら、私たちの母や祖母たちが暮らした大正・昭和初期とはどんな時代であったのかをお話しいただきます。 |