平清盛の息女、高倉天皇の中宮建礼門院徳子に仕えた右京大夫の歌集(回想録)を取り上げます。平家の全盛期から滅亡に至る歴史を目の当たりにしつつ、ままならぬ恋に身を焦がす彼女の心と詞は、『平家物語』とは違う光の当て方で、同じ時代を浮き彫りにしています。作品は、和歌と詞書から成り、極めて簡潔ですが、その行間から浮かび上がる世界は約八百年前のものと思えない鮮度で迫って来ると思います。前期は宮廷生活の懐かしい思い出のあれこれを、後期は清盛の孫に当たる資盛との恋の成り行きを中心に、『平家物語』や関係資料などを併せ見ながら読み進める予定です。
テキスト/久松潜一・久保田淳校注『建礼門院右京大夫集』(岩波文庫) |