室町時代に観阿弥・世阿弥親子が芸術性を高めた能は、織田信長や豊臣秀吉、徳川家康など大名の多くが愛好し、江戸時代には幕府の公式芸能になりました。神事から始まり、武家社会における芸術へと育った能。能の「決まり事」には、武士道的な感性、道徳やストイックさが加味されています。心身を極限状態に追い込んだ能楽師は役を通じて、観客を人間の根源的、感覚的な深いところにいざないます。能は、人間が人間としていられるために、日常と非日常を行き来することで心のバランスを整えることの重要性を訴えます。本講座では、武士道の観点から江戸時代と現代の共通点についてお話しし、実演を交えながら能の普遍性について考えていきます。 |