学校法人 城西大学 Josai University Educational Corporation

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エクステンション講座 「翻訳の世界」が開催されました

翻訳の世界
 ―カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』をめぐって―

2007年6月9日(土)午後1時30分から3時まで、英米文学翻訳で高名な土屋政雄氏と比較文化研究者の新井潤美氏においでいただき、翻訳についてのあれこれをお話いただきました。

まず、土屋氏から、翻訳者としての原点について、清水幾太郎『論文の書き方』から学んだことの話がありました。引き続き、文章の難易度をはかる Fog Count の話、英語を日本語に翻訳してもファイルの大きさは大きく変わらないことなどの話があり、具体的に何に気をつけて、どのように文章を書くようにしているかについて、大切にしていることや基準にしていることを話されました。

カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』の冒頭部分を英語を新井氏に日本語を土屋氏に朗読していただいたあとで、作品固有の用語を日本語に置き換えるときの考え方などについて、「「donor」は、「ドナー」とするとあからさまにピンときてしまうので、避けました。これを「提供者」としたことで、「carer」は半ば必然的に「介護人」に決まりました。ただ、読んでいると、介護もするけれど民生委員のような事務的な仕事のほうが多そうなので、適切な訳語だったかどうかは何ともいえません。しかし「世話人」では意味が違ってきますしね。」といった解説がなされ、すでに本を読んできている受講生は、ひとつひとつうなずきながら聞き入っていました。

また、英国育ちでもある新井氏からは、イシグロの独特の文体の説明、SF的なイギリスで子供に人気の「寄宿学校もの」の語りの特徴があらわれていること、マダムの存在もその要素を強めているものであることなどが語られました。

会場からは、数多くの質問が出て大変盛り上がり、最後に、土屋氏から、翻訳というのは読書の最終到達点であるとの話があり、皆大きくうなずいていました。

対談の様子

対談の様子

会の様子

会の様子


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