学校法人 城西大学 Josai University Educational Corporation

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学校法人城西大学創立50周年特別講演会・ジャック・ジエス氏による「仏教の中国・日本での発展」を開催いたしました

2016年1月20日に学校法人城西大学(水田宗子理事長)は創立50周年記念の特別講演会として、元ギメ・フランス国立東洋美術館長のジャック・ジエス(Jacques Giès)氏による「仏教の中国・日本での発展(Integration of Buddhism in China and Japan)」を東京紀尾井町キャンパス3号棟で開催しました。

ジエス氏は、フランス人、仏教美術と中国学の大家であるとともに美術館の運営や文化行政にも深く係わられた研究者として広く知られています。ソルボンヌ大学で美術史、INALCO(イナルコ、国立東洋言語文化学院)で中国文明・言語の博士号をとられたあと、両方の大学やエコール・デュ・ルーブルで長く教鞭をとられ、また国立ギメ東洋美術館の中国・中央アジア絵画彫刻部の主任キュレーターを長年担当された後、館長(2008年−11年)となり、その他も歴任されました。

本講演に先立つ挨拶の中で、水田理事長より、城西大学グループでは「世界の中の日本」という視点に立ち、日本の芸術・文化を世界の中に位置づけ、その受容・伝播の過程における変化や相互の影響を教育と研究の対象にし、また美術館の運営を学ぶために学生を海外に送っていることの紹介がありました。

華厳経絵(ギメ美術館所蔵)

華厳経絵(ギメ美術館所蔵)

ジエス博士は、中国への仏教の伝来と普及というふたつの時代に美術史の観点から焦点を当て、ギメ美術館所蔵の色彩豊かな敦煌壁画のスライドを写しながらお話しを進められました。ギメ美術館所蔵のぺリオコレクションの色鮮やかな華厳経変相の敦煌絵画の2点は掛幅画としては大変稀で貴重なものですが、敦煌石窟の壁画には第6窟、9窟、55窟や61窟、76窟などには華厳経の壁画があります。仏教は中国からさらに日本や韓国に伝わりますが、奈良時代に建立された東大寺の大仏はこの華厳経の教主の盧舎那仏で、その坐る円座の蓮弁には線画で華厳の世界が美しく線刻されており、また1770年に韓国の松広寺で保存状態の良い華厳経絵が発見されています。仏教はインド・中央アジアからシルクロードを通り、中国に伝わり、そこで発展し、その道はさらに日本や韓国につながりました。
  講演会には仏教美術の研究者などのゲストや大学の教職員、「世界の中の日本」の授業履修の学生が多数出席し、講演会後のレセプションでは日本文化やフランスについての話題で盛り上がりました。
  ギメ国立東洋美術館は、パリ市内のトロカデロ(イエナ広場)にあり、欧州では最大の東洋美術品を所蔵しています。日本関係も充実していますので、今後、フランスへの研修や留学で教職員や学生が訪問する機会もあると思われます。

【講演詳細】

ジエス博士は、中国への仏教の伝来と普及というふたつの時代に美術史の観点から焦点を当て、ギメ美術館所蔵の色彩豊かな敦煌壁画のスライドを写しながらお話しを進められました。英語での専門的な講演でしたので、要点を以下のようにまとめました。北インドで紀元前5世紀に誕生した仏教はアフガニスタン・パキスタン・中央アジアや中国の西域(Serindiaセリンデイア)を通るシルクロードを経て後漢の時代の中国に伝播し、北路と南路が交わる敦煌には3世紀から千年の間、石窟に極めて多くの壁画や文書が残されています。五胡十六国の時代から5世紀にかけては涼州、長安などで鳩摩羅汁を始めとする西域の人びとによる仏典の翻訳(サンスクリット語などから漢語へ)が活発に行われました。弥勒菩薩に関する経典も翻訳されると、初期の頃の敦煌石窟275窟にはまだギリシャ風な大きな弥勒菩薩像が祀られ、盛唐の45窟では妙法蓮華經の翻訳から法華経の世界が絵画と彫刻を合わせた三次元で表されるようになりました。次に仏教が広まったのは7世紀から8世紀半ばにかけての唐の最盛期です。今回は中国人による仏典の新訳が盛んに行われ、寺院の建築なども進みました。多くの宗派が栄えますが、特に究極のものとして華厳経の学習や研究が深まり、経典の翻訳もなされました。ギメ美術館所蔵のぺリオコレクションの色鮮やかな華厳経変相の敦煌絵画の2点は掛幅画としては大変稀で貴重なものですが、敦煌石窟の壁画には第6窟、9窟、55窟や61窟、76窟などには華厳経の壁画があります。釈尊が悟りを開いて初めて説法をするのはベナレスの鹿野苑ですが、華厳経ではそれ以前に釈尊は一言も発しないのに、無数に集まった菩薩が釈尊をたたえて三昧に入ると釈尊の光明を受けて釈尊の広大な仏世界を見るという、上記の変相図ではその劇的な場面が描かれています。また釈尊のたどった菩薩道を感得して善財童子歴参の善知識を通じた菩薩道の難行が入法界品で展開され、それも絵画化されています。仏教は中国からさらに日本や韓国に伝わりますが、奈良時代に建立された東大寺の大仏はこの華厳経の教主の盧舎那仏で、その坐る円座の蓮弁には線画で華厳の世界が美しく線刻されており、また1770年に韓国の松広寺で保存状態の良い華厳経絵(ポスター参照)が発見されています。仏教はインド・中央アジアからシルクロードを通り、中国に伝わり、そこで発展し、その道はさらに日本や韓国につながりました。

講演するジエス氏

講演するジエス氏

講演会の様子

講演会の様子

講演会に先立ち、1月19日学校法人城西大学紀尾井町キャンパス3号棟ギャラリーにて、ミュージアム・カフェを開催。ジエス氏にフランスギメ国立東洋美術館の歴史と概要について、お話しいただきました。

ミュージアム・カフェにて 水田理事長挨拶

ミュージアム・カフェにて 水田理事長挨拶

ミュージアム・カフェの様子

ミュージアム・カフェの様子


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