学校法人 城西大学 Josai University Educational Corporation

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学校法人城西大学 国際現代詩センター主催・「荒ぶるゆりかご―3.11の惨事への詩的な応答―」を開催しました

学校法人城西大学(水田宗子理事長)は東日本大震災から5年目の2016年3月11日、3・11の惨事を詠った詩人と俳人による座談会と詩の朗読会「荒ぶるゆりかご―3・11の惨事への詩的な応答―」を、東京紀尾井町キャンパス1号棟ホールで開催しました。朗読会は本学の国際現代詩センターが主催し、詩人や研究者、市民の方々、本学の教職員・学生ら約300人が参加、震災の記憶を新たにしました。

登壇したのは、俳人の高野ムツオ氏のほか、詩人の新井高子、ジェフリー・アングルス(Jeffrey Angles)、大崎清夏、白石かずこ、高橋睦郎、田中庸介、谷川俊太郎、田原、平田俊子の9氏に加え、詩人でもある本学の水田理事長(50音順)。また、学校法人城西大学出版会では、登壇した詩人たちがそれぞれ発表した詩を英訳した詩集「These Things Here and Now: Poetic Responses to the March11,2011 Disasters」(ジェフリー・アングルス氏編・訳)を刊行します。今回のイベントは、詩集刊行の記念も兼ねて開催しました。

詩集「These Things Here and Now: Poetic Responses to the March11,
2011 Disasters」(ジェフリー・アングルス氏編・訳)

詩集「These Things Here and Now: Poetic Responses to the March11,2011 Disasters」
(ジェフリー・アングルス氏編・訳)

イベントは午後2時半開会。主催者を代表して水田理事長が「アングルスさんの翻訳により、私たちの経験が広く世界の人たちに届くことは、大変素晴らしいことと思います」などと挨拶しました。震災の発生した午後2時46分に、多くの犠牲者の冥福を祈って1分間の黙祷を捧げた後、米・西ミシガン大准教授で日本文学研究者でもあるアングルス氏が「東日本大震災と日本詩歌」と題して基調講演。「震災後、詩歌は他の文学ジャンルよりも早く反応した。社会における詩歌の立場が再考された」と述べました。

挨拶する水田理事長

挨拶する水田理事長

基調講演をするアングルス氏

基調講演をするアングルス氏

コーディネーターのジョーダン・スミス先生

コーディネーターの
ジョーダン・スミス先生

第1部の座談会(白石氏を除く10人)で、高野氏は「俳句はあまり時事的な出来事を詠んでこなかったが、今回の大震災にあたってはたくさんの句が生まれた。17音の俳句だけにしかない固有の言語の力があったのだと改めて感じた」と語りました。また、高橋氏は「言葉が科学を生み、原子力を生み、その結果が災害を生んだ。言葉は無力だが、地球は我々人間のものだけでないということを伝えていくのも言葉しかない」と強調しました。新井氏は「東北の言葉を覚えるのも、ひとりの詩人としての仕事かと思う」と述べて、東北の方言である“ケセン語”で詠まれた詩を紹介しました。水田理事長は「惨事は、人の心にしまわれた存在の原点のようなトラウマと響き合う、そこから他者にも響く表現が生まれてくるのではないか」と述べました。また、谷川氏は会場からの質問に答えて「言葉は使われ方によって無力になったり、無意味になったりするものだから、自分自身の中に自分の言葉を生まれさせて、他人の言葉をどう自分の中に取り込むしかないと思っている」と語りました。

座談会の様子

座談会の様子

第2部は白石氏を含めた11人による朗読会が開かれました。最初に高野氏が「四肢へ地震(なゐ)ただ轟轟と轟轟と」などの震災詠7句を披露。その後、詩人たちが、詩集「These Things Here and Now: Poetic Responses to the March11,2011 Disasters」に収録された詩を朗読しました。このうち、高橋氏は今回の詩集のタイトルの元になった「いまここにこれらのことを」を、大崎氏は「うるさい動物」、田中氏は「からし壺」、水田理事長は「青い藻の海」、田氏は「津波」など、平田氏は「ゆれるな」などを朗読しました。そして谷川氏は「言葉は壊れなかった⁄流されなかった⁄ひとりひとりの心の底で⁄言葉は発芽する⁄瓦礫(がれき)の下の大地から」と綴る「言葉」などを朗読しました。最後に、白石かずこ氏が「海、陸、影、岩沼⁄津波、津波がやってきた」と詠う「海、陸、影、」を朗読。聴く者の魂を揺さぶるような朗詠に涙をぬぐう人の姿もありました。朗読後、「皆さんも祈ってください。魂のかぎり」と呼びかけた白石氏に大きな拍手が送られました。

朗読する高橋氏(左)と訳すアングルス氏

朗読する高橋氏(左)と訳すアングルス氏

朗読する新井氏

朗読する新井氏

朗読する谷川氏

朗読する谷川氏

朗読する白石氏

朗読する白石氏

この日はホール前のホワイエで、版画家、美術家の柳澤紀子氏の特別展「夢の地面」も開かれ、参加者が見入っていました。
  なお、詩集「These Things Here and Now: Poetic Responses to the March11,2011 Disasters」(3000円+税)は3月31日発行予定。販売に関するお問い合わせは学校法人城西大学出版会(℡03-6238-1526)。

特別展「夢の地面」を鑑賞する参加者

特別展「夢の地面」を鑑賞する参加者

大連理工大学 杜 鳳剛教授による揮毫

大連理工大学 杜 鳳剛教授による揮毫


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