「表象文化と旅:過去・現在・未来」
2006年7月1〜2日 城西国際大学東京紀尾井町キャンパス
大会議長 水田宗子、大会運営委員長 三木紀人

2006年度AJLS学会では、日本文学を中心とする表象文化における旅と、その変容に関する報告およびパネルを募集する。
旅は、本拠地からの移動と滞在を広くさす語である。したがって、旅とその表象は、その主体の意思の強弱や娯楽性の濃淡によって、さまざまな様相を呈している。加えて、現代では、科学技術の発達により、旅自体が外には宇宙、内には体内へ、また、現在・未来へと、空間的・時間的に大きく拡大しつつある。これら旅の変容は、日本の表象文化においてどのようにとらえられてきたのか、改めて
考える機会としたい。
神話世界からみられる「貴種流離」の概念は、社会的・政治的背景に基づく移動者たちの表現に受け継がれている場合が多い。一方、信仰に根ざした物詣や、歌枕や名所旧跡を訪ねる旅は、信仰や文芸といった目的と同時に旅そのものを楽しむ精神を形成していった。また、明治期には、探勝的景観を求めて、人々は旅に出かけ、新たな「風景」を発見した。
後者は、日本の観光の基礎ともなったが、ここで文学はいわば旅の動機づけの役目を担う一方で、絵、写真、テレビ番組、映画などのメディアとともに、風景の集団的表象を量産し、そして更なる旅を生産した。そして、近現代において旅行は、大衆産業として発達し、今も社会の要請に伴って、環境と自然、癒しなどの要素を取り入れ、変化しつづけている。いまや観光は国策(観光立国)ともなっているが、そこで文学と旅の関係性がどう利用され、変化するのかも注意される。また、旅行会社とメディア産業の結び付きにより、旅先で読む文学が配信されるしくみまで誕生し、読むという行為に変化を与えている例もあり、もはや文学も旅も経済行為にしっかりとからめとられているといえよう。
この度募集する報告の主題は、以下のものを含むものとする。
- 表現主体と表現形式 :
- 視点の所在、読み手の存在
- ジェンダーと旅
- 語り、吟遊
- 道行文
- 和歌・連歌・俳諧と旅
- インナートリップとしての旅 :
- 信仰の旅(物詣、巡礼、修行、勧進)を記すこと
- 成長小説としての旅文学、旅の文学における自己発見
- 虚構としての漂泊文学
- ユートピア・ファンタジィ・童話
- 移動と越境・異文化理解・異文化接触 :
- 神々の旅(貴種流離、まれびと)や政治的漂流(地方赴任、左遷、亡命)などを中心に
- 現在と過去、都会と田舎、故郷と外国、日常性と非日常性
- 異文化へのまなざし―享受、順応、拒絶
- 優位者、観察者としてのまなざし−植民地視察、出稼ぎ・入植者の記録
- 異文化接触の反転としての自文化発見、自己相対化
- 修学旅行、留学、研修におけるカルチャーショック
- 現代文化と旅 :
- メディアおよび発達と旅文学
- ツーリズムの変化(観光、癒し、環境)
- 高齢化社会の旅と文学

上記のカテゴリーを参照しつつ、新しい研究領域・研究方法の開拓、もしくは有益な資料の発掘など、
研究の発展に寄与する論文と発表を、多数ご応募お寄せいただけるよう期待している。
締め切りは、2006年3月1日、要旨は400字以内。
〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-26
城西国際大学(東京紀尾井町キャンパス)
このウェブサイトの「大会参加申込」ページをご参照ください。
下記のメールアドレス、またはファックスで受け付けます。
E-mail : ajls2006@jiu.ac.jp
FAX : 03-6238-1299
- 大会運営委員(岡田美也子、欒殿武、川野有佳)に御連絡下さい。
- 2006年度大会では日本語を使用言語とし、基本的に通訳・翻訳なしで開催します。
ただしこれまでどおり英語での報告も可とします。